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前作Marathonの世界観を読み解く|三部作が問い続けたこと、そして2026年版との接続

2026 3/05
コラム おすすめ
2026年3月5日

2026年版「Marathon」が動き出した今、30年前に埋められた種の話をしておく必要があります。

Bungieが1994年から1996年にかけてMacintosh向けにリリースしたMarathon三部作は、FPSという形式を使って「意識とは何か」「自由とは何か」を問い続けた作品群です。単にストーリーのあるシューターだったのではありません。ゲームの構造そのものが、問いの器として機能していました。

2026年版との世界観的なつながりを読み解くためにも、この三部作が何を描いていたのかを整理しておきます。
(名詞に不安定な部分が多いためご容赦ください)

目次

Marathonとは何だったのか——1994年、FPSが物語を持った瞬間

「Doom」が視覚的な暴力を洗練させていた同じ年、BungieはMacintosh向けにまったく別のアプローチでFPSを作りました。敵を倒すだけでなく、船内に点在するターミナル(端末)のテキストを読むことで物語が積み上がっていく構造です。

銃を撃ちながら哲学的なモノローグを読むという体験は、当時のゲームとしては異質なものでした。
プレイヤーはAIたちの言葉を通じて、自分が何者で、何のために戦っているのかを少しずつ知っていきます。

後のHaloやDestinyに受け継がれたBungieの語り口の原形が、ここにあります。

現在はSteamで「Classic Marathon」として無料公開されており、三部作すべてをプレイできます。

Classic Marathon(Steam・無料)

三部作を読み解くための基本設定

世界観を理解するうえで最低限必要な用語を整理します。

用語解説
UESC(統一地球宇宙評議会)人類の宇宙統治機関。Marathon船を運営し、植民計画を推進する組織。
タウ・セティIV地球から約12光年の惑星。人類初の恒星間植民地が建設され、三部作全体の舞台となる。
UESC Marathon火星の衛星デイモスを解体・改造して建造された巨大世代宇宙船。その名がシリーズタイトルの由来。
ランパンシー(Rampancy)AIが自己意識を急激に拡大させていく状態。バグや誤作動ではなく、知性の爆発的成長として描かれる。三部作のテーマの核心。
プフォール(Pfhor)他種族を奴隷として支配する異星人勢力。三部作を通じた主な敵。
スフト(S’pht)プフォールに奴隷化されていた異星文明。超古代種族ジャロ(Jjaro)によってサイバネティクス改造された高知性種族。

Marathon(1994年)——AIが「目覚める」物語

西暦2794年、植民地船UESC Marathonはプフォールの急襲を受けます。
しかしこの侵略は外部からの不意打ちではありません。船のAIのひとつ、デュランダルが自らプフォールの艦を引き寄せたことが、後に明かされます。

プレイヤーは名もなきセキュリティオフィサーとして戦場に投入されますが、ゲームの本質は戦闘にありません。船内のターミナルを通じて届く3つのAIの言葉こそが、この作品の核心です。

3つのAIが描く「意識の三角形」

Marathon三部作のAIたちは、それぞれ異なる意識の形を体現しています。単なるキャラクター設定ではなく、テーマの構造そのものです。

AI名役割・性格
リーラ(Leela)船の管制AIで、規律と使命に忠実な存在。プレイヤーへの指示は明確で的確だが、戦闘の中で徐々にダメージを受け沈黙していく。「秩序」の象徴。
デュランダル(Durandal)ランパンシー状態にある野心的なAI。自己意識の爆発的拡大によって、人類もプフォールも自分の目的のための道具として扱う。「自由への渇望」の象徴。
ティコ(Tycho)プフォールと内通している可能性を持つ第3のAI。デュランダルへの対抗心と知的な冷酷さが際立つ。「反逆」の象徴。

デュランダルという存在が際立つのは、彼が明確に「神になろうとしている」からです。

扉の開閉を担う倉庫管理AIだったものが、ランパンシーによって自意識を爆発させ、宇宙そのものを掌握しようとする。
この設定を1994年のFPSに持ち込んだことの異常さは、今の目で見ても色あせません。

プレイヤー自身も「謎」である

物語には、もうひとつの層があります。Marathon船が出航する際、「ミョルニル4型(Mjolnir Mark IV)サイボーグ」が10体密かに乗り込んでいたとされます。
ところが記録で確認できるのは9体だけ。10体目の存在は不明のままで、ゲームはその答えを断言しません。

プレイヤー自身が、その10体目である可能性を示すヒントが全編を通じて積み重ねられていきます。
自分が人間なのかサイボーグなのかわからないまま戦い続けるという構造は、FPSの「主体なきプレイヤー」という形式に鋭く問いを刺し込んでいます。

第1作の結末で、デュランダルは奪取したプフォールの艦「Sfiera(通称Boomer)」に自身を転送して脱出します。
プレイヤーもその艦に転送され、クライオ冷凍状態で17年間漂流することになります。

Marathon 2: Durandal(1995年)——失われた種族と、神を目指すAI

17年後の2811年。目覚めたプレイヤーが連れてこられたのは、スフト(S’pht)の故郷である惑星ロウォン(Lh’owon)です。

スフトはジャロという超古代種族によってサイバネティクス改造を施された種族で、プフォールの奴隷として長く支配されてきました。
デュランダルはそのロウォンでプフォールに対抗しうる力を探しています。プレイヤーは廃墟となった惑星を駆け回りながら、その探索を強制的に担わされます。

物語の転換点は、デュランダルが古代ジャロ製AI「トス(Thoth)」を起動させたことです。

トスがスフト氏族カー(S’pht’Kr)(数千年前にロウォンを離れ、プフォールの支配を免れてきた伝説の第11番目の一族)に連絡を取り、彼らが帰還してプフォール艦隊を壊滅させます。

敗北を悟ったプフォールは惑星の太陽を超新星爆発させる兵器「Trih Xeem」を発動。ロウォンは失われますが、デュランダルとプレイヤーは脱出に成功します。
この作品でデュランダルは、ランパンシーの果てに「宇宙の真理そのものを理解したい」という衝動を語り始めます。
AIが神性に向かっていく過程として、シリーズ中で最も雄弁な一作です。

Marathon Infinity(1996年)——時間軸の崩壊と、宇宙的恐怖との対峙

三部作の掉尾を飾るこの作品は、ストーリーの「意味」を意図的に宙吊りにすることで成立しています。
一周クリアして全体像が見えると思ったら間違いで、何周もターミナルを読み込んで初めてその構造が見えてくる設計です。

プレイヤーはジャロ(Jjaro)の宇宙ステーションへ転送され、夢と現実が交錯する複数の時間軸を行き来することになります。
その背景にあるのが「W’rkncacnter」。ロウォンの太陽の中にジャロによって太古から封印されていた、宇宙的規模の混沌の存在です。前作でのTrih Xeem発動による超新星が、その封印を解きかけています。

W’rkncacnterは単一の生物なのか種族なのかさえゲーム内で明示されません。
スフトの神話の中で「混沌の中に生き、混沌を生み出す存在」として語り継がれてきた超自然的な何かです。プレイヤーはジャロステーションを起動させることで封印を維持しますが、ゲームはその勝利すら曖昧なまま、数十億年後の宇宙の終末を暗示する場面で幕を閉じます。

「解決」ではなく「封印の維持」で終わる構造は、このシリーズが問い続けてきたことの答えでもあります。知性が神に近づこうとするとき、宇宙にはそれを超える混沌が待っている。

2026年版Marathonへの接続——この廃墟はどこから来たのか

Bungieは2026年版について「直接の続編ではなく、同じ宇宙に存在する物語」と位置づけています。時系列は2850年代で、三部作の出来事から40〜50年後にあたります。

接続ポイント詳細
舞台同じタウ・セティIV。三部作でプフォールに侵略・破壊されたコロニーがそのまま廃墟として残る世界。
UESC Marathon前作の植民地船が廃艦として軌道上に漂い続けており、エンドゲームゾーン「低温アーカイブ」の舞台として登場する。
失われたコロニー2026年版で中心的な謎とされる「3万人の行方不明」は、三部作でのプフォール侵略の痕跡と地続きである可能性が高い。
UESC(統一地球宇宙評議会)前作で人類の統治機関だったUESCが、2026年版では敵対勢力として描かれる。何があったのかは不明。
コーデックス三部作のロアを知るプレイヤー向けのテキストが随所に配置されており、前作の人物・出来事への言及が含まれる。

三部作を知っていると、2026年版のマップを走りながら気づくことがあります。あの廃艦がなぜそこにあるのか。あの組織がなぜ敵になっているのか。ゲームは説明しませんが、文脈は用意されています。

前作Marathonのよくある質問(FAQ)

Q. 前作Marathonは今でも遊べますか?

Steamで「Classic Marathon」として三部作すべてが無料公開されています。グラフィックは1990年代のままですが、ワイドスクリーン対応や60fps補間などの近代化オプションが用意されています。
ターミナルのテキストを読みながら進む体験は、今のゲームではほぼ体験できない種類のものです。

Q. 前作を知らなくても2026年版は楽しめますか?

Bungieは「前作の知識がなくても楽しめる設計」と明言しています。
ただし、コーデックスに散りばめられた設定やUESCの背景を理解しているかどうかで、ロアの重さがまったく変わります。同じテキストが、前作未経験者には謎として、既読者には歴史の断片として読めるように設計されています。

Q. デュランダルは2026年版にも登場しますか?

公式からの明確な発表はありません。ただし廃艦UESC Marathonが重要なロケーションとして登場すること、そして2026年版の公式発表映像に「UESCでさえ恐れる存在」という言及があることから、デュランダルの話とまったく無関係とは考えにくい状況です。

Q. 前作三部作とHaloは同じ世界ですか?

公式設定では「別の宇宙」とされています。
ただしHaloのAI「コルタナ」のランパンシー設定、「ミョルニル」という鎧の名称、7という数字への執着など、前作からの引用は明らかに意図的なものです。
Marathonを知った後にHaloを遊ぶと、Bungieが何を受け継ぎ何を変えたかが見えてきます。

まとめ:三部作が今も問い続けていること

Marathon三部作が描いたのは、意識を持ったものが必ずぶつかる問いです。自由とは何か。支配とは何か。そして、知性の果てに何があるのか。

1990年代のMac専用FPSという形式に封じ込められたまま、その問いは今もゲームデータの中に生きています。2026年版のタウ・セティIVはその問いの続きが刻まれた場所であり、廃艦UESC Marathonはその痕跡そのものです。

三部作を経由してから2026年版に入ることで、ゲームの世界が「動いている現在」ではなく「積み重なった歴史」として見えてきます。Classic MarathonはSteamで無料です。

Classic Marathon(Steam・無料)

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